目次
腰痛患者の現状
厚生労働省は日本人の有訴者率の中で、男性では第1位、女性では第2位を占める
(平成22年国民生活基礎調査)と報告しており日本国民のほとんどが罹患するとされています。
またアメリカでも、腰痛は医療施設受診原因の第5位を占めます。
疫学的に患者数の多い腰痛ですが、その定義はあいまいな部分も多く
いまだに研究が日々行われている分野になります。
実際に整形外科で働いていると、毎日のように腰痛で悩まされている方を治療する機会に恵まれます。
これだけ罹患している方が多くいるにもかかわらず、腰痛の『定義』や『原因』、『評価方法』、『治療方法』などは確立されていません。
今回は腰痛の『評価』に注目し、5分でわかるよう説明書を作成しましたのでご覧ください。
「腰痛」の定義はない?!
腰痛診療ガイドライン 2012では定義で、確立したものはないといわれています。
しかし、
①触知可能な最下端の肋骨と殿溝の間の領域に位置する疼痛
②急性腰痛発症からの期間が4週間未満、
亜急性腰痛(発症からの期間が4週間以上3ヵ月未満)、
慢性腰痛(発症からの期間が3ヵ月以上)
③原因の明らかな腰痛と、明らかではない
非特異的腰痛(non-specific low back pain)
とされています。
図.腰椎の原因別分類
非特異的腰痛は、前述した明らかな原因のない腰痛を総称する言葉です。
画像上の脊椎変性所見は症状と必ずしも一致しないため、一般的には非特異的腰痛の範疇に入れる場合が多いです。
つまり疾患の知識、確実な病態の評価が求められる疾患であるといえます。
ここがポイント!問診で患者像を明確に!!
ROMやMMTなどの評価も重要ですが問診は腰部疾患に限らず最も重要な評価項目であると考えられます。
[box class="blue_box" title="問診で聞くべきポイント"]
疼痛部位 質(鋭利痛、鈍痛) 程度 発症時期 どのような場面で痛いか[/box]
この時オープンクエッションからクローズドクエッションに絞っていき、 より深く患者像を明確にします。 時間を割いてもいいので患者さんの病態をはっきり確認しましょう。 [aside type="normal"]
オープンクエッション:「はい、いいえ」などの回答範囲を設けずに相手が自由に返答できる質問のこと。具体的には「5W1H」の6つの疑問符を使った質問 クローズドクエッション:「はい、いいえ」で答えられるような、答える方法や回答範囲が限られている質問の仕方のこと。[/aside]
問診で患者像を明確にできたら、次は疼痛の再現を行っていきます。 この時大きく分けて2つのタイプの患者さんがいると思います。 Aタイプ:自宅での疼痛を評価時に訴える方 Bタイプ:評価時は痛くないが自宅での腰のだるさや疼痛を訴える方 例外はあるかもしれませんが、大きくこの2つに分けられると思います。 となると評価のアプローチはここをメインに見ていきます。 Aタイプ:疼痛動作時の確認 Bタイプ:アライメントの確認 あと共通して言えることは体幹動作の確認です。 まずはどのような動作で痛いのかはっきりさせましょう。 初めに大きな動き(歩行・階段)を見ていきます。 アライメントの確認で前額面・矢状面・水平面を見ていきます。 各骨のランドマークを視診・触診しながら、正常よりどの程度外れているかを見ていきます。 この時もおおまかに全体を把握した後細かく骨のランドマークの位置を確認しましょう。 観察しながらどの部位に負荷がかかっているかを考えます。 このとき評価結果をフィードバックしてあげると、患者さん自身の理解も深まり今後の治療展開が楽になっていきます。 [box class="blue_box" title="体幹回旋時に評価する項目"]
胸郭 股関節・足部のモビリティ 屈曲・伸展動作時での股関節 脊柱の可動域 疼痛の有無 [/box]
胸郭・股関節・足部は各関節の中で、動的(モビリティ)の関節と呼ばれています。 これらの関節が動いていないと腰や膝の静的(スタビリティ)関節が代償してしまいます。 本来ならば固定性に働く関節が動いてしまうので、疼痛が出現するのは当然ですよね?? 代表的な腰椎疾患としては腰椎すべり症があります。 またなぜ回旋かというと腰椎は構造的に回旋動作に弱く、基本的に回旋動作は上部胸椎で行っています。 その補助を行っているのが3軸性の機能を有している股関節・足関節になります。 これらの関節がきちんと機能しているかを評価してください。 [box class="blue_box" title="体幹屈伸時に評価する項目"]
脊柱の過度な前・後弯FFD股関節の可動域 屈曲時の疼痛は椎間板由来、脊柱起立筋、大臀筋の筋スパズム 伸展時の疼痛は椎間関節性疼痛、脊柱管狭窄症 [/box]
これらをみていくことにより大まかに腰痛疾患の方の病態を絞り込めてきます。 皆さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、評価の一連の流れを言語化してみました。 そんなこと知ってるよ!当たり前!という方もいると思いますが、今一度自身の評価方法を見直してみてください。 ここまでご覧いただきありがとうございました。
ここをおろそかにしてしまうと、評価→治療の流れがうまくいかなくなってしまいますので気を付けましょう。動き、疼痛動作から原因を絞り込もう!
患者のタイプを把握する
Aタイプの場合
簡単にいうと動作観察ですね。
歩行・階段動作だったらどの層で疼痛が出現するのか、
動き始め・途中で出現するのか、
荷重時・非荷重時か等を見ていき疼痛動作を明確にします。Bタイプの場合
各タイプで行う共通の評価
まとめ