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脊柱管狭窄症に対して可能なアプローチ

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脊柱管狭窄症とは

脊柱管狭窄症とは、加齢や労働背骨の病気など様々な原因で骨・関節・椎間板の変性・黄色靭帯などが肥厚し、脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで血行が阻害されるため足腰の痛みやしびれとなって現れる症状です

腰部脊柱管狭窄症ガイドライン 2011では「腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔の狭窄化により、神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ、症状を呈すること」と定義されています

厳密には特定の病気を指す病名ではなく、脊柱管を通る神経が圧迫されて起こる病態の総称になります

また診断基準は下記画像のようになっています

また下記のような脊柱管狭窄症サポートツール(Grade B)というものが使われており、早期診断に役立っているそうです

椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いです
また背骨を後ろに反らすと脊柱管が狭くなり、前に曲げると広がるような構造になってます


※引用画像:恩賜財団済生会

発症年齢は50代から増えはじめ、高齢になるほど多くなります(50代の約13%が発症していると言われている)70歳以上の高齢者の50%が罹患すると報告されています
脊柱管の内部は、加齢とともに狭くなる宿命にあるので、年を取るほど症状が現れやすくなります

若年者の場合はスポーツを行うような腰に負担がかかる動作を繰り返しおこなった結果発生することが多いです

発症部位は頸部・胸部・腰部とそれぞれの部位で発症する可能性があり、頸部と腰部は同時に発症することも稀ではありません

好発部位はL4/L5、L5/S1、L3/L4で脊髄はL2以降は馬尾神経という神経根の束になっているので腰部脊柱管狭窄症はほぼ馬尾神経の症状を呈します
馬尾は血管とともに硬膜によって包まれているため、脊柱管が狭窄するとまず硬膜が圧迫を受け間接的に中に位置する神経根が圧迫を受けます

腰部脊柱管狭窄症の原因

加齢や労働背景、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより

神経が圧迫され、血流の低下が起きますので、脊柱管狭窄症が発症し、足腰の痛みやしびれが生じてしまいます

腰部脊柱管狭窄症の症状

・腰痛

・下肢の痛みや痺れ

・腱反射の消失・減弱

・(神経性)間欠性跛行

※間欠性跛行
しばらく歩いたり腰を沿ったりすると足に痛みやしびれを生じ、少し休むとまた歩けるようになる症状。血管性間欠歩行との鑑別が必要となる。血管性の場合、①姿勢による影響を受けないこと②足背動脈の触診が出来ない③足関節上腕血圧比(ABI:ankle brachial pressure index
)にて判別するが両者が合併することも考慮に入れておくことも重要です

大島正史:2012:腰部脊柱管狭窄症の診断と治療―ガイドラインを中心に―より

※間欠性跛行が見られない場合には他の疾患を疑う必要が出てきます!

またさらに以下の3つに分類されます
また、痛みの部位が異なり、分類されたどの症状も、特徴としてはあまり長い距離を歩くことが難しくなります

①神経根障害

②馬尾(ばび)神経障害

③混合型障害

の3つに分類されます

神経根症状

神経が圧迫された左右どちらか一方の腰から下半身に強い痛みとしびれが現れる片側性になります

特徴的なのは長時間立ち続けたり歩いたりした際に痛みやしびれが強く出ます


※引用画像:脊柱管狭窄症ひろば

馬尾神経障害

脊髄の末端にある馬尾という神経の束が圧迫されて発症するタイプのことになります

神経根障害とは異なり、症状が両側性に現れます

・両下肢の痛みやしびれ(異常感覚)

・冷感などの異常感覚

・膀胱直腸障害

などが見受けられます

※引用画像:脊柱管狭窄症ひろば

膀胱直腸障害

・頻尿

・残尿感や開始遅延、排尿困難

・便秘

・肛門周囲の違和感

このような症状も見受けられますので、症状としては神経根障害に比べ重症となり、手術が必要なことも多いです

混合型障害

馬尾型と神経根型の両方が混在したタイプになります
両者を合わせた混合した症状が見受けられます

※引用画像:脊柱管狭窄症ひろば

障害別によって治療内容が異なってきます

脊柱管狭窄症の診断

画像診断

・単純X線(レントゲン)

・MRI

・脊髄造影検査

※引用画像:日本整形外科学会

まず、レントゲンで表面的な部分を診て、それでも原因が特定できなければ、深層にあるMRIにて『椎間板ヘルニア』との鑑別をします
MRIでもはっきりしない場合やMRIが禁忌の方に関しては、脊髄造影検査が必要になります

画像診断だけでは症状の有無を判断できない。しかも狭窄の程度と臨床症状の重症度が一致しないのが一般的である(脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011より)

下肢の血流障害でも同様の症状が出ますので鑑別が必要です
脊柱管狭窄症の特徴は姿勢による影響(前傾姿勢で楽になる)が特徴です

脊柱管狭窄症の治療

基本として保存療法が主ですが、退行変性(老化)を主病態とすることが多いため、手術が適応される場合もあります

10年後の自然経過は「改善が3割、不変が3割、悪化が4割」と報告されており、やはり自然改善は難しいと言えます


軽度から中程度の方であれば1/3から1/2では自然経過でも良好な予後が期待できるとされており、(Grade B)神経機能が急激に悪化することは稀である(Grade B)とされています
急激に悪化した場合には椎間板ヘルニアなど別の疾患の可能性も視野に入れる必要があります

またリハビリテーションにおいては運動療法や物理療法の関しては十分なエビデンスは認められなかったと発表されています
あくまで二次障害の発生を予防するのが主となり生活指導などを交えながら指導することが望まれます

保存的治療

・薬物療法

・神経ブロック注射

・物理療法

・リハビリテーション

・コルセットなど

症状改善が難しく、日常生活に支障をきたす場合に関しては手術が適応されます

脊柱管狭窄症の手術適応

・椎弓切除術

・椎弓形成術

・脊椎固定術

などが大まかにあり、除圧術か固定術に別れどれが適応されるのは主治医の判断によります

特に膀胱直腸障害や明らかな筋力低下を起こしている場合には手術の適応となるケースが多いです。また、痛みやしびれにより日常生活に支障をきたしてくる場合にも手術をお勧めされることがあります

手術治療の長期成績は、4~5年の経過では総じて患者の70~80%において良好とされています。ただし、それ以上長期になると低下することがあります(Grade C)

手術治療成績に影響する因子に関して、次のエビデンスが挙げられています。手術適応と判断された患者において、

①罹患期間が長すぎると十分な改善を得られないことがある(Grade B)
②安静時の下肢しび れは消失しにくい(Grade B)
③術前にうつ状態があると成績が低下する(Grade B)

具体的なアプローチ

脊柱管狭窄症の原因が黄色靭帯の肥厚や椎間板の膨隆であればリハビリによる改善の効果は低いと思われます

腰仙椎コルセットを用いることで,歩行距離の延長と疼痛の軽減を得ることが可能である (Grade C)

腰部脊柱管狭窄症の治療における牽引、低周波の意義に関して十分なエビデンスは得られていない (Grade I)

理学療法または運動療法が単独では腰部脊柱管狭窄症に有効であるとの十分なエビデンスは得られていない(Grade I)

腰部脊柱管狭窄症の症状の一部である腰殿部痛や下肢痛については理学療法と運動療法の組み合わせは有効である (Grade C)

腰部脊柱管狭窄症の治 療に脊椎マニピュレーションが有効であることを裏付ける十分なエビデンスはない (Grade I)

どれを見てもアプローチの効果は薄く見えてこない部分であります

しかし、「脊柱伸展位になることで痛みが増悪する」という病態から考えると腰椎の過度な前弯を抑制することで対処ができると考えられます

つまり・・・腰椎前弯や骨盤前傾を抑制し、腰椎後弯、骨盤後傾させるようにアプローチをすることで痛みが発生しない環境を作ることが可能であると考えられます

 

腰椎前弯・骨盤前傾させるのは・・・

・腸腰筋
・多裂筋
・脊柱起立筋
・広背筋
・大臀筋(上部線維)
・大腿直筋
・大腿筋膜張筋

が挙げられます

これらの筋肉の過緊張を抑制することができれば症状を抑えることが可能です

反対に腰椎後弯・骨盤後傾させる筋肉を活動させることで相反抑制が働き過緊張を抑えることが可能となります

つまり・・・
・大臀筋(中・下部線維)
・ハムストリングス
・腹直筋
・腹横筋
・腹斜筋
・骨盤底筋群

これらの筋肉を賦活してあげることで腰椎前弯・骨盤前傾の抑制が可能となりますので症状を抑えることが可能になります

日常生活上の注意点

日常生活で姿勢を正しく保つことが必要です
症状が出てしまった時には、背筋を伸ばしすぎると脊柱管を狭窄させることになるので、無理に伸ばしすぎず楽な姿勢を取ってもらうようにしましょう

また、痛みが出た時には無理をせず休むことの重要性を伝えておく必要があります

自転車こぎは痛みの出にくい運動になりますのでオススメです

 

まとめ

本日は脊柱管狭窄症の原因や症状、治療方法についてお伝えさせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?

症状によっては手術適応の場合がありますが、基本としては保存療法で解決できることが多いのです

問題となるのは血流の障害なので、基本的には筋・筋膜・関節へのアプローチで対応が可能です
しびれや異常感覚・腱反射の低下や消失が発生している場合には難渋することがあります

主なリハビリテーションとしては症状の発生を防ぐようにアライメントの調整をし、動作指導を行うことで二次障害の発生を抑制することが目的となります

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました

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