最近ではありがたいことに理学療法以外のことも聞かれる事が増えてきてました
その中でも知り合いにマグミットについて教えて欲しいと言われましたのでまとめてみました
実はこの話は知り合いの看護師から聞かれたものです!
私個人的な意見では、「薬って本当に覚えられない・・・」「すぐに忘れる・・・」「種類が多い・・・」とあまりいい印象がありません
結局毎回辞書を開いたり、ググったりしています
看護師の方が薬については詳しいのかなと思っていましたが、詳しく聞いてみると私たちとそんなに違いはないみたいですね
それでは本題に入りましょう
一般の方であれば「マグミット=下剤」という認識で良いかと思いますが、コメディカルであればもう少し深いところまで理解したいところです
今回は
①マグミットがなぜ下剤の効果があるのか?
②なぜ副作用が出るのか?
上記2点を機序から紐解いていきたいと思います
マグミットとは
マグミットにかかわらずお薬が処方された場合、説明書がセットで貰えるかと思いますが、マグミットの場合「便通が良くなります」「胃酸を中和します」などの書かれ方がされていると思います
その他にもいつ飲んだらいいのか?何個飲んだらいいのか?副作用はどのようなものがあるか?副作用が出た時の対処法などが書かれているかと思います
マグミットとは薬品名であり、ある製薬会社が出している商品です
一般名は酸化マグネシウムです
一般名とは物質の原料のことを表しており、薬品名とは各製薬会社が一般名の原料を使って作った商品名になります
イメージとしてはアクエリアスとポカリスエットのような感じですかね
中身はほとんど同じだけど出している会社が違うので、商品名も違うわけですね
お薬でも同じようにA社はマグミット、B社はイオナミン、C社は酸化マグネシウム錠剤、D社ではマグラックスという感じになっています
どれがいいのかと言われると非常に難しいところですが、酸化マグネシウムを使っていることは同じなので効果はほとんど同じと考えてよいかと思われます
市販薬と医療薬は濃度が違うので効果に差はありますが、お医者さんに出していただくお薬はどの薬品名のものでも大差はないと考えられます
今回のマグミットも250mgや330mgなどと書かれていることがありますが、これは量を表すものなので、効果に差が出てきますのでご注意ください
たくさん取ればいいというものでもないのでお医者さんの指示に従って内服するようにしてください
さてマグミットは緩下剤であり、胃液の中和を行うとお話ししましたが、今回はなぜこのような効果があるのかを話していきたいと思いますが・・・
そのためにはマグネシウムという物質について詳しくなりましょう
マグネシウムとは
マグネシウムはミネラルの一つですね(ミネラルには他にもカリウムやリンなど沢山あります)
細胞内液にほとんどが存在し、細胞外には1%程度しか存在していません
主な分布場所は骨です。半分以上は骨に沈着していると言われています
この時もリンや塩と結合しており、マグネシウムとは少し形を変えて存在しています
その他には筋肉や神経、脳にも存在しています
マグネシウムは主に小腸で吸収(摂取量の25%程度)され、腎臓から再吸収(60〜80%)・排泄(5%程)されます。この時小腸での吸収を促進してくれるのがビタミンDになります
ビタミンDは日光浴が必要と言われています
これを考えると便秘の人は日光浴をすることで解消される可能性がありそうですよね
皆さんはお日様の光を浴びていますか?
話を戻します
逆にカルシウムやリンはマグネシウムの吸収を抑えます
つまり身体の中ではマグネシウムの量はカルシウムやリンなどの他の栄養素の影響を受けるということになります
体内ではマグネシウムとカルシウムの割合が決まっておりマグネシウム1に対しカルシウムが2〜3程度となっています
マグネシウムの摂取基準と含有する食べ物
必要量については厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)を参照ください
おおよそ300mg前後摂取する必要があることが分かるかと思います
しかし、日本人の平均摂取量は250gと言われており、わずかですが足りていない状態です
つまり、少しだけ意識して摂取する必要があるということですね
ではこの300mgは何をどのくらい摂取することで満たすことができるのか?
マグネシウムが多く含まれている食品は
そばのひ孫と孫は(わ)優しい子かい?納得!
と覚えると良いそうですね
海藻、海苔やひじき、大豆・ナッツ類、ゴマ魚、野菜あたりは有名ですね♬
あおさであれば10g、あおのりなら25g、わかめなら30g、昆布なら45g、ひじきなら50g程度摂取すると300mgになるそうです。(あくまで目安ですのでお気をつけください)
また、マグネシウムは水に溶けていることもありますので、汁物は全て飲むと良いと思います
注意が必要なのは調理の過程で水分に溶け出て洗い流してしまうことですね!
加工食品などはほとんどマグネシウムは残っていないとも言われていますね
昔から海苔については「1日2枚で医者いらず」と言われていますが、あながち間違っていないのかもしれませんね
これからはサラダには海藻を混ぜましょう!味噌汁にも海藻を入れましょう!ご飯やお餅は海苔を巻きましょう!
マグネシウムで便秘が改善されるということは、摂取しすぎると下痢になりますので、取りすぎには気をつけてくださいね
摂取基準はあくまで目安です!人により身体の具合が違うのでご自身の身体に合う量を見つけることが大切です
マグネシウムの作用
マグネシウムの効果は以下の通りです
①酵素の補助因子
②エネルギーの産生
③血管拡張・体温調節
④骨芽細胞の活性化
⑤神経伝達・筋収縮の制御
⑥排便の促通
それぞれを細かく見ていきましょう
①酵素の補助因子
酵素が活性化する過程においてマグネシウムはなくてはならないものです
マグネシウムを必要とする酵素には基質とマグネシウムが結合して反応が起きる第一群と酵素とマグネシウムが先に結合して反応が起きる第二群の二種類があります
この二種類はマグネシウムがなければ働きませんし、その種類が300種類以上あると言われています
酵素の働きに関与するので当然新陳代謝に影響が出てきます
その中で一番重要な酵素がATPです
②エネルギーの産生
ATPの産生にはアセチルCoAを基質として酵素を分解しながら行っています
TCAサイクルで働く酵素のほとんどがマグネシウムを必要とする酵素ですのでマグネシウムは疲労にも影響が出ると考えらえます
久しぶりにこの図を見る方も多いかもしれませんが、ここに書かれているカタカナはほとんどが酵素ですね
この酵素が働くにはマグネシウムが絶対必要なんですね
③血管拡張・体温調節
血管を収縮させる物質はトロンボキンサンA2です。これは細胞膜にあるリン脂質由来のアラキドン酸から産生されています
反対に血管を弛緩させる物質は一酸化窒素(NO)です。これは血管内皮細胞から放出されます
つまりトロンボキンサンA2と一酸化窒素のバランスで正常に保たれているということです
このトロンキボンサンA2の抑制に関わっているのがマグネシウムです
つまりマグネシウムが少なくなると血管を収縮させるトロンキボンサンA2の量が増えてしまうため、血管収縮が起こりやすくなってしまいます
また体温調節については
人体は血管を拡張することにより体内にこもった熱を放出しています
実際に汗の成分にはマグネシウムも含まれています
逆に熱を逃がしたくない時には血管を収縮させ、さらに指先などの末端部を優先して収縮させ身体の中心部を温めようとする反応が起こります
末端冷え性などは熱を逃がさないために起こっている生体反応です
④骨芽細胞の活性化
骨の成分は無機物(これがミネラル)70%、有機質22%、水分8%です
有機物とはコラーゲンのことでタンパク質から作られ、硬い弾性をもたせ丈夫な骨にしてくれています
一方、無機物はリン酸カルシウム85%、炭酸カルシウム10%、リン酸マグネシウム1.5%となっています
これを見るとカルシウムの方が重要な感じがしますが、もちろん間違っていません
マグネシウムの働きはこのカルシウムの量を調整している所にあります
つまり骨芽細胞に働きかけて骨を丈夫にしてくれるのです
骨芽細胞の活性化にはビタミンDやKも関与しているのでこちらも同時に摂取する必要があります
補足ですが、骨芽細胞にはインスリン受容体が存在するので、糖尿病の方は骨粗鬆症になりやすいとも言われています
⑤神経興奮・筋収縮の抑制
神経の伝達の際には脱分極と再分極が起こることによって伝達されています
細胞内外では電解質が不均一に調整されており、内側ではK+(カリウムイオン)が外側ではNa+(ナトリウムイオン)が多く存在しています
細胞膜が興奮していない時の膜電位を静止膜電位といい、細胞内がマイナス(分極状態にあるという)、細胞外がプラスになっています
膜に刺激が入るとナトリウムチャネルが開き細胞内にNa+流入し細胞内がプラスに傾きます(これを脱分極という)
するとCa2(カルシウム)+チャネルが開きカルシウムが細胞内に流入し、さらに細胞内はプラスに傾いていきます
最後にカリウムチャネルが開くと、細胞外にK+が出て行くので細胞内は再びマイナスに戻ります(これを再分極という)
この電位の一連の流れを活動電位というが、マグネシウムは脱分極の際に起こるK+の流出をブロックする作用がありますこのマグネシウムによるブロックが効かなくなるとK+は細胞外へ出て行きます
つまり電位差を大きくすることで神経伝達を行っていることになります
また筋肉の収縮・弛緩にカルシウムが関与しており、濃度が上がると収縮し、少なくなると弛緩します
このカルシウムイオンを調整をしているのがマグネシウムですので、間接的に筋肉の弛緩作用があると考えられます
⑥排便の促通
腸でのマグネシウムの吸収は摂取量が増えると吸収率が下がり、摂取量が少ないと吸収率が高いという特徴があります
腸で吸収されなければ腸管内の浸透圧が高まるので腸管内に水分が集まることになります
便秘の方は水分が抜け過ぎてしまい、小さくなっており、腸壁に刺激が入りにくいので蠕動運動が起きにくい状態となっています
ここにもう一度水分を含ませることで腸壁への刺激を加えて排便を促していることになります
いかがでしょうか?
生理学を交えて考えて行くと昔習ったことが繋がってくるのではないでしょうか?
どちらかというと難しすぎてわかんないですかね(笑)
マグミットの作用・副作用
ここまでマグネシウムについて話してきました
ここからは本題のマグミットについて話していきたいと思いますが、ここまで読んでいただけたらなら説明をしなくても分かるかも知れませんがもう一度説明しますね
最初にも述べましたがマグミットはある会社が出している商品です
使われている物質名は酸化マグネシウムです
つまりマグネシウムの効果を利用して排便や胃酸の中和を行っているということです
効果は先ほど述べた、腸管内の水分量を増やして便の水分含有量を増やし、蠕動運動を促すということになります
胃酸の中和は酸化マグネシウムがアルカリ性なので強酸の胃酸と合わさると中和されるということです
このマグミットは副作用が少なく、長期的に服用ができるとされていますが、もちろんお薬ですので効果はだんだんと薄くなってきます
高マグネシウム血症になり口渇、筋力低下や易疲労、血圧低下、徐脈などが起こる可能性もあります
このデメリットもマグネシウムの効果が出過ぎてしまったものですね
やはり問題は薬が効きにくくなることにあると思われます
マグミットに頼っている方・便秘に悩んでいる方がとるべき行動
ではマグミットからの卒業!便通の改善を図るにはどのようにすれば良いのか?
最後に話していきたいと思います
便秘の方がやるべきこと
①正しく栄養を摂りましょう
②水分摂取量を増やしましょう
③腸の蠕動運動を促しましょう
④プチ断食を行う
①まずマグネシウムを不足なく摂取することは言うまでもありません
マグネシウムを多く含む食品を食べることを心がけましょう!
さらにカルシウムやリンはマグネシウムの吸収を阻害するので取り過ぎに注意しましょう
②次にやるべきは水分摂取量を増やしましょう
効果⑥でもありましたが、腸管内の水分量を増やすことで排便の促通がなされました
身体の60〜70%は水分でできています
1日におしっこや汗、不感蒸泄により2〜2.5ℓの水分が身体の外で出て行くと言われています
皆さんはその分の水分摂取ができていますか?
水分が足りていないと排便は促されませんので、もし上記の量が足りていないのであれば水分摂取量を増やす必要があります
③最後に蠕動運動を促す
腸の活動は腸内温度が40℃の時が一番活発であると言われています
腸内温度が40℃とは腋窩体温が36.5〜37.1℃です
つまり体温が高い方が腸の活動も活発であるということです
お腹を冷やしてはいけないとよく言われていますが、まさにその通りなんですね
なので水を飲む際には冷たい水ではなくお白湯(暖かさの目安は口にした時にあったかいと思えたら大丈夫です)をお勧めします
普段の食事の際にも冷めたものではなく温かいものを食べることをお勧めします
足湯なども体温を上げるにはお勧めです
私自身も食事で何を取るか、そして何を取らないかをすごく考えています
普段の飲み物をほとんどがお白湯です
昔はコーヒーやお茶ばかり飲んでいましたが現在は9割5分がお白湯になり、摂取量も1日で3ℓ以上飲んでいます
足湯はまだやれていませんが、定期的にランニングをしたり瞑想をしたりして体温が上がるような習慣を続けています
いつか足湯も習慣化できたらいいなと思っています
これをやり始めてから私自身の便秘もなくなり、新陳代謝が良くなっているので疲れにくくなり、精神的にも安定できるようになりました
④プチ断食を行う
16時間腸内に食べ物を入れないと大蠕動運動が起こると言われています
蠕動運動が弱く、少なくなると便が移動しなくなるので便秘になりやすくなります
ぜひマグミットからの卒業や便秘に悩んでいる方がいましたら試してみてください
セラピストの方はマグネシウムの効果をしっかりと理解していただき患者様へ正しい知識を伝えていただけましたら幸いです
最後までブログをご覧になっていただきありがとうございました